防災、そして環境

地球、あるいは地球を構成する大陸、海洋、大気、または都市あるいはその周辺の地域などが現在抱える自然環境の深刻な問題を考える時、その対策を講じることは急務であります。環境理工学創造専攻では、自然と人間社会の関わりから発生する諸問題を身近なスケールから解決するための研究を進めると共に、その方策を実行する人材を育成することを目標にしています。これまで人間社会は、利便性を重視したシステムを作り、自然現象と対峙した場合、それを克服するための手だてばかりを考えてきました。すなわち、人間はいつも自然に対して挑戦してきました。何とか自然災害に対する防護策を見出すこと、それが防災です。しかしながら、社会システムが高度かつ複雑になると防災も大がかりになります。これまでの科学技術の発展はその大変な仕事まで可能にしてしまいました。そして、この方法がベストで、万能であるとも過信してしまった訳です。それが度を過ぎたとき、その歪みから環境問題が発生します。これに気づくのに遅すぎたことが、現在の地球規模の様々な自然現象における問題を招いたのは確かでしょう。現在、環境を疎かにしてきたという反省の弁が、日本の、というより世界中の強い流れとなっていることは周知のことです。しかしその一方で、自然を思う意識が強すぎると、時には先端的な科学技術そのものが標的にされ、自然界だけからみた環境の姿へやや極端に揺れ戻りすぎた意見も度々みられます。自然はいつも優しいばかりではありませんし、単に科学技術に反発してもよい結果は得られません。環境保全と防災、それらは適度なバランスが重要で、両者は共に必要なのです。自然を畏怖し、今一度問題をじっくりと再考することから始めてはどうでしょうか。環境という言葉だけが先行気味である昨今、それにいたずらに執着するとかつての重厚な学問体系が失われ、論理に基づかない薄っぺらな議論だけになる危険があります。単に耳ざわりのよい案だけが生まれて何も解決できない事態にもなりかねません。環境という概念もこれから新しいものへと変えていく必要がありそうです。これからの大学院では、新しい社会システムを模索し、それを基盤とした理工学の創造的な研究スタイルが求められています。これまで通り研究成果を深く理解することはもちろんですが、人間がこれまで築き上げた技術を幅広く使いこなせるようになることも要求されています。全部自分でやろうとすると大変ですが、志を共有する何人かで協力し合えば効率よく実現できるのではないでしょうか。
環境あるいは防災という研究分野は、従来の理工学においては、気象学、建築学、土木工学など、自然現象と関わりを持つ学問を中心にそれぞれの学問ごとあるいは時にゆるく結びつきながら発展してきました。しかし、問題が複雑に絡み合ってくると、これからはもっと幅の広い範囲での学問の融合が進み、問題解決に挑むものと思われます。本研究室にも、多種多様のキャリアを持った人が集まってきています。地球惑星、物理などの理学部から、機械工学、建築学、土木工学などの工学部から、出身学科はバラバラです。しかし、彼らがこれまでの経験に基づき、お互いに刺激を与え合うことは、大きな力を生み出すに違いありません。本研究室は、防災、そしてよりよき環境に向けて新しい研究のあり方を模索しています。